フランスの1月6日といえば「エピファニー(公現祭)」──
キリストの誕生を祝うこの日に食卓に並ぶのが、ガレット・デ・ロワ。
パイ生地の中にアーモンドクリームを詰めた、黄金色に輝くお菓子です。
この日に“王様になれる”という遊び心のある風習が、
ガレット・デ・ロワを特別な存在にしています。
切り分けた一切れの中に「フェーヴ(そら豆や小さな陶器)」が入っていたら、
その人は“今日の王様”。紙の王冠をかぶって、家族や友人の祝福を受けるのです。
この起源をさかのぼると、古代ローマ時代の農耕神サトゥルヌスを讃える祭りまで行き着きます。
当時は乾燥させたそら豆をくじ引きに使い、当たった人が宴の主役となりました。
やがてキリスト教が広まるにつれ、その習慣はエピファニー(公現祭)と結びつき、
“王様を決めるお菓子”として受け継がれていったのです。
16〜17世紀になると、ブリオッシュやパイ生地にクリームを挟んだガレット・デ・ロワが完成。
南フランスでは今でもリング状のブリオッシュタイプが食べられており、
地域ごとに少しずつ異なる姿で親しまれています。
世界の裏話
ガレット・デ・ロワに欠かせない「クレーム・フランジパーヌ(アーモンドクリーム)」──
その名の由来には、ちょっとロマンチックな逸話があります。
1533年、カトリーヌ・ド・メディシスがフランスへ嫁ぐ際、
彼女に恋していたローマ貴族フランジパーヌ伯爵が贈った香りのレシピが、
後にこのクリームの名となったといわれています。
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