アメリカの秋の味覚として親しまれているパンプキンパイ。
その起源は17世紀、ヨーロッパから新大陸へ渡った移民たちが、現地で豊富に手に入るかぼちゃを使って作ったことに始まるといわれている。もともとヨーロッパでは、かぼちゃはスープや煮込みなどの料理に使われる野菜だったが、アメリカでは砂糖やスパイスを加えて甘く仕立て、焼き菓子として親しまれるようになった。
当初は、かぼちゃを煮て裏ごしし、牛乳や卵、シナモン、ナツメグなどを加えて焼き上げた素朴なもので、今日のパンプキンパイの原型ともいえるものだった。18世紀になるとレシピが家庭に広まり、感謝祭(サンクスギビング)や秋の収穫祭に欠かせないお菓子として定着していく。オーブンの中で焼き上がる香りは、家族のぬくもりを象徴するものとなった。
そしてアメリカ人にとって、パンプキンパイは「家族と過ごす秋」の象徴であり、祖母や母の味として語り継がれる特別な存在である。
日本でもハロウィンの広まりとともに親しまれるようになり、かぼちゃのやさしい甘さとスパイスの香りが、秋の訪れを感じさせる季節の定番スイーツとなった。
世界の菓史
17世紀初頭のアメリカ。厳しい自然の中で生き抜くため、開拓民たちは手に入る素材を工夫して調理した。保存のきくかぼちゃは貴重な栄養源であり、その甘みと温かみは人々の心を癒やすものだった。感謝祭の食卓で焼きたてのパンプキンパイを囲む光景は、いまなお「アメリカの心」を象徴している。
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